「MBTIを何度受けても、そのたびに結果が変わってしまう」
「もっと確かな方法で、自分の性格を知ることはできないのかな」

そんなふうに感じて、遺伝子検査が気になっている方もいらっしゃるかもしれません。

生まれてから変わることのない遺伝子なら、今度こそ「本当の私」がわかるのではないか、と。

私自身も、体質を知りたい気持ちとあわせて、「私ってどんな人なんだろう」と、自分の性格を客観的に見てみたくて、遺伝子検査を受けてみたひとりです。

一方で「遺伝子で性格なんて、本当にわかるの?」「なんだか怪しい」と感じる気持ちも、とても自然なものだと思います。

この記事では、性格と遺伝について研究でわかっていること・まだわかっていないことを、できるだけやさしく整理してみました。

あわせて、遺伝子検査を受けた私が感じたことと、結果に振り回されないための受け止め方もお伝えします。

※この記事は、性格と遺伝に関する研究を、一般の読者向けにわかりやすく紹介するものです。医学的な診断や、特定の検査の精度を保証するものではありません。

性格は遺伝する?研究でわかっていること

木のテーブルの上に開いたノート

性格の個人差の、およそ4割に遺伝が関わっている

 性格と遺伝の関係は、主に「双生児研究」という方法で調べられてきました。

遺伝子がほぼ同じ一卵性双生児と、半分ほどを共有する二卵性双生児を比べることで、性格の似かたに遺伝がどのくらい関わっているかを推定する方法です。

2015年に発表された、これまでの研究をまとめた大きな分析(10万人以上のデータ)では、性格の個人差のうち、およそ40%に遺伝が関わっていると報告されています。

双生児研究だけで見ると約47%、家族や養子の研究では約22%と、調べ方によって数字には幅もあります。

性格の個人差の約40%は遺伝の影響、約60%は環境の影響によるものと考えられる

Vukasović & Bratko(2015), Psychological Bulletin をもとに要約

「4割が遺伝」は「性格の4割が生まれつき決まっている」という意味ではない

 ここで、ひとつ大切なことがあります。

「遺伝が4割」と聞くと、「私の性格の4割は、生まれたときから決まっている」と感じてしまうかもしれません。

けれど、この数字はそういう意味ではないんです。

この4割は、たくさんの人を比べたときに見えてくる数字です。

人によって性格が違う、その「違い」がどこから生まれているのかを調べると、遺伝の違いで説明できる部分がおよそ4割、育った環境や出会った人、重ねてきた経験など、遺伝以外のもので説明できる部分がおよそ6割になる、ということなんです。

そのため「私の性格のうち4割は遺伝でできていて、6割は環境でできている」というように、ひとりの性格を切り分けて考えるための数字ではありません。

ひとりの人の中では、生まれ持ったものと、これまでの日々が、分けられないほど重なり合って、今の性格ができていると考えられています。

「性格の遺伝子」はひとつではなく、たくさんの遺伝子が少しずつ関わる

 では、性格を決める「性格の遺伝子」があるのかというと、そうではないようです。

最大で26万人ほどのデータを使った2017年の研究では、性格の特徴と関係がありそうな遺伝子の場所が6か所見つかりました。

その後、神経症傾向について約45万人を調べた研究では、136か所まで見つかっています。けれど、そのひとつひとつの影響は、とても小さなものでした。

研究者たちは、性格には非常に多くの遺伝子が少しずつ関わっていて、さらに環境との組み合わせも影響していると考えています。

ひとつのスイッチで性格が決まるのではなく、たくさんの小さな要素が、少しずつ重なっている、そんなイメージに近いのかもしれません。

では、遺伝子検査で性格はどこまでわかる?

DNAから直接読み取れる部分は、まだ小さい

 双生児研究で「およそ4割」とわかっていても、実際にDNAを調べて、そこから性格を読み取れるかどうかは、また別のお話です。

DNAの違いから性格の個人差をどのくらい説明できるかを調べると、研究がいちばん進んでいる神経症傾向(ストレスへの敏感さ)でも、およそ1割でした(約45万人の研究)。

イギリスの約5,000人を調べた別の研究では、外向性・協調性・誠実性について、はっきりとした数字が出ていません。

さらに、中国で行われた同じような研究では、5つの性格のどれについても、はっきりとした結果は得られなかったと報告されています。

つまり今の科学では、双生児研究でわかっている遺伝の影響のうち、DNAから直接読み取れるのは、まだ一部にとどまっていると言えそうです。

「この遺伝子だから慎重な性格」と言い切れる遺伝子は、まだ見つかっていない

 「セロトニンに関わる遺伝子のタイプで、慎重さがわかる」といったお話を、目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

こうした「ひとつの遺伝子と性格の関係」は、以前は大きな注目を集めていました。

けれど、その後に行われた大規模な研究では、はっきりした関係が確認されなかったり、関係があってもごく小さかったりすることがわかってきています。

遺伝子検査の性格の結果は、「この遺伝子があるから、あなたはこういう人」と決めるものではなく、「こういう傾向があるかもしれない」というヒントとして受け取るのが、今の研究とも合った受け止め方だと思います。

専門家も、遺伝子検査の「限界」に目を向けている

 日本人類遺伝学会は2010年に、医療機関を通さずに受けられる遺伝子検査について見解を出しています。

対象には、性格や能力に関わる遺伝子を調べるとされる検査も含まれています。

その中では、性格などを確実に予測できるかのような誤解を与える広告も少なくないことに触れたうえで、検査を提供する側は、科学的な根拠や結果の読み取り方、そしてその限界を、わかりやすく伝える必要があるとしています。

また、日本ではこうした検査の信頼性を、受ける人自身が判断しなければならない状況にあるとも述べられています。

もちろん、すべての遺伝子検査が怪しいというわけではありません。

ただどの検査を受けるときも、わかることと、まだわからないことの両方を知ったうえで使うことが大切なのだと思います。

それでも、私が遺伝子検査を受けてよかったと思う理由

 ここまで読んで、「それなら受ける意味はあるの?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

私は以前、chatGENE(チャットジーン)という遺伝子検査を受けました。

研究の限界を知った今でも、受けてよかったと思っています。

その理由をお話しさせてください。

遺伝子の結果と、アンケートの結果が並んで出てくる

 私が受けたchatGENEの性格分析は、遺伝子の結果だけで性格を決めるのではなく、12問のアンケート(今の私)の結果と並べて見せてくれる仕組みでした。

性格の5つの特徴(外向性・開放性・協調性・誠実性・神経症傾向)それぞれについて、「生まれ持った傾向」と「今の私」を見比べることができ、最後に両方をあわせた総合結果が出てきます。

遺伝子検査の結果とアンケートの結果をあわせた、性格5項目の総合結果のグラフ

実際に見てみると、いくつかの項目で、遺伝子とアンケートの結果が大きくずれていました。

  • 神経症傾向(ストレスへの敏感さ):遺伝子は39%敏感、アンケートは80%敏感
  • 外向性:遺伝子は60%外向、アンケートは40%外向
  • 開放性(新しいことへの興味):遺伝子は51%、アンケートは73%

「遺伝4割、環境6割」という研究のお話を知ってから見返すと、このずれは、とても自然なことのようにも感じられました。

ずれは「間違い」ではなく、ここまでがんばって生きてきた積み重ねなのかもしれない

 特に心に残ったのは、神経症傾向のずれでした。

生まれ持った傾向は、どちらかといえば穏やかで安定している。

それなのに、今の私は、まわりの空気にとても敏感になっている。

その数字を見たとき、「私は生まれつき傷つきやすい人間だったわけじゃないのかもしれない」と思えました。

いろいろな環境の中で、自分を守りながら、一生懸命に適応しようとしてきた。そして今の繊細さは、その積み重ねだったのかもしれない、と。

遺伝子の結果が「本当の私」で、アンケートの結果が「間違った私」というわけではありません。

生まれ持った傾向も、今の私も、どちらも私なんですよね。

このときの気持ちや、ほかの結果を見て感じたことは、「MBTIや性格診断のラベルに縛られていませんか?「私はこういう人」を手放したら、少し自由になれた話」の記事で、詳しく書いています。

遺伝子検査の結果に振り回されないための3つの視点

テーブルの上の地図と紅茶のカップ

結果は「地図」であって、あなたのすべてを表すものではない

 遺伝子検査の結果も、MBTIや性格診断の結果も、自分のことを知るための「地図」のようなものだと思っています。

地図は、今いる場所や、まわりの景色を知る手がかりになります。

けれど、地図に描かれているのは、景色のほんの一部です。

そこを歩いているあなたの気持ちや、これから向かいたい場所までは、地図には描かれていません。

「遺伝子にこう書いてあったから、私はこういう人」と決めてしまうと、せっかくの結果が、かえって自分を小さな枠の中に閉じ込めてしまうこともあります。

診断の結果との付き合い方については、「MBTIに疲れたあなたへ|「私は何タイプ?」を探し続けて苦しくなったときに読んでほしいこと」にも書いています。

当たっているところより、「意外だったところ」を眺めてみる

 結果を見ると、つい「当たっている」「当たっていない」で判断したくなります。

でも私にとって大切な気づきをくれたのは、むしろ「意外だった」結果のほうでした。

人の気持ちに寄り添う「共感型」だと思っていた私に、chatGENEの行動特性の分析が出したタイプは、目標に向かって合理的に突き進む「論理的な推進者」。

最初は「いやいや」と思わずツッコミを入れてしまいました。

けれど振り返ってみると、仕事を休んでデンマークへの留学を決めたときも、ひとりでブログを始めて書き続けてきたときも、そこには確かに、まっすぐに進む力がありました。

意外だった結果は、「当たっていない」と切り捨てる前に、「そういう私も、どこかにいたのかな」と、少しだけ眺めてみる。

それだけで、自分の新しい一面に出会えることがあります。

日々の記録や、今の自分への質問と並べて見る

 遺伝子の結果は、それだけで見るよりも、今の自分の気持ちや日々の記録と並べて見るほうが、ずっと意味のあるものになると感じています。

たとえば、「どんなときに心地いいと感じるか」「どんなときに疲れてしまうか」を書き出してみると、生まれ持った傾向と、今の暮らしの間にあるものが、少しずつ見えてくるかもしれません。

自分への問いかけには、自分を知る質問30選|書くだけで自己理解が深まる【無料ワークシート付き】の質問も使ってみてください。

日々の気持ちを書きとめることについては、ジャーナリング(日記)を1年半続けた結果|人と比べて落ち込みやすかった私に起きた4つの変化でもご紹介しています。

遺伝子検査はどんな人におすすめ?受ける前に考えておきたいこと

 ここまでのお話をふまえて、性格を知るために遺伝子検査を受けるなら、どんな人におすすめできるのか。

そして、どんな人には少し立ち止まって考えてみてほしいのかを、私なりにまとめてみました。

おすすめな人

  • 自分のことを、いろいろな角度から眺めてみたい人
  • MBTIやアンケートの診断とは違う視点も、ひとつ加えてみたい人
  • 性格だけでなく、睡眠や肌、食事など、体質のこともあわせて知りたい人

少し立ち止まって考えてみてほしい人

  • 「これが本当の私」という答えを、検査で決めたいと思っている人
  • 結果をもとに、進路や人間関係を決めようとしている人

もし今、答えを決めたい気持ちが強いときは、遺伝子検査を受ける前に、結果を「地図」として使う考え方を、少しだけ心にとめておいてもらえたらうれしいです。

「本当の私」の答えを探すことについては、「自分らしさとは?答えを探すのをやめたときに見えてきたこと」にも書いています。

ちなみに、私が受けたchatGENEの申し込みからレポートまでの流れや、料金、通常版とProの違いは、「私の取扱説明書|話題の遺伝子検査『chatGENE(チャットジーン)』を体験してみたリアルな【口コミ・レビュー】」で詳しくご紹介しているので、ご参考までに。

おわりに:生まれ持った傾向も、今の私も、どちらも私

 遺伝子検査で、性格のすべてがわかるわけではありません。

研究でわかっているのは、性格の個人差には遺伝がある程度関わっていること。

そしてそれは、たくさんの遺伝子と、これまでの環境や経験が重なり合ったものだということです。

だからこそ、遺伝子検査の結果は「あなたはこういう人」という答えではなく、「こういう一面もあるのかもしれない」と、自分をやさしく眺めるためのヒントになるのだと思います。

生まれ持った傾向も、ここまで生きてきた今の私も、どちらも大切な私の一部。結果に振り回されるのではなく、自分と少し仲良くなるためのきっかけとして、使ってみてくださいね。

【あわせて読みたい】「自己理解とは?自分を知る方法が見つかる完全ガイド」